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ID運用のROIを言語化する:Oktaで効く3つの発生率(例つき)|Nextmode Blog

作成者: ますこー|2026/07/06 05:51

はじめに:ROIを“金額以外”で、やさしく整理してみる

Oktaを検討していると、最後に気になるのが「結局、ROI(投資対効果)ってどう考えればいいの?」というところだと思います。

ただ、ROIの金額試算は会社ごとに前提が大きく違います(人件費単価、SaaS契約、運用体制、対象人数、入退社頻度など)。そのため本記事では金額そのものには踏み込まず、まずは導入効果を説明しやすいように 「割合(発生率×削減率)」 で整理してみます。

結論から言うと、OktaのROIは次の2つの“率”を置くだけでも、かなり効果が明確になると思います。

  • 発生率(どれくらい起きているか):ID変動、MFAの再登録、パスワード忘れ…など
  • 削減率(どれくらい減らせるか):Okta+標準連携でどこまで自動化できそうか

本記事の発生率・削減率は、特定顧客の実績ではなく「一般的に置かれがちな仮定値(例)」です。自社の実態に合わせて置き換えてください。

この記事で扱う前提

対象の規模感

  • 対象人数:1,000人規模
  • 対象人数:500人規模

対象数は様々ですが、私たちが得意としている中堅企業を例にしてみます。

環境の置き方

  • 利用SaaS数:30アプリ
  • 年間営業日数:240日

Okta社が毎年出している業務アプリの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2026」では利用SaaS数についてはグローバルと日本でまだまだ差がありますが、日本も前年比15%と増加しています。
日本では平均53個という調査が出ましたが、今回は中堅企業が対象ですので30個とおいています。

今回想定するOktaのライセンス構成

本記事では、ROIを考える前提として、以下の機能を利用するプラン(構成)を想定します。
よくあるOktaの利用例として使われる代表的なライセンスです。
ちなみにこのセットのことを弊社では「ハッピーセット」と呼んでいます。

  • SSO(Single Sign-On):認証の入口を集約し、アプリごとのログイン運用をそろえる
  • UD(Universal Directory):ユーザー/属性情報の統合と、グループ・属性ベースの制御
  • MFA(Multi-Factor Authentication):多要素認証による本人確認の強化(ポリシー統一を含む)
  • LCM(Lifecycle Management):入退社・異動などに伴うアカウント改廃の自動化(プロビジョニング/デプロビジョニング)

発生率

ここでは「一般的に置かれがちな仮定値」として、以下の発生率を採用します。金額と同様に、発生率も各社の実態で大きく変わるため、まずは“自社の問い合わせ/人事イベントの実績”があればそれを優先してください。

  • 年間のID変動率(入退社・異動・契約更新):15%/年
    • ボリューム感:対象人数 × 15% が、年間に発生するIDイベント数(例:1,000人なら150件、500人なら75件)
    • 根拠:多くの組織では「入社・退社」に加えて、部署異動、兼務、役職変更、委託契約の更新/終了など、ID・権限の変更イベントが継続的に発生します。これらをまとめて“年間で全体の1〜2割程度は動く”という仮定を置くと、概算として説明しやすくなります。
  • 年間のMFA紛失率:20%/年
    • ボリューム感:対象人数 × 20% が、再登録・復旧が必要になるイベント数(例:1,000人なら200回、500人なら100回)
    • 根拠:MFAは「紛失」だけでなく、機種変更・端末故障・アプリ再インストール・端末入替などで再設定が発生します。ゼロにはならない前提で、一定割合の再登録イベントが出るものとして置くと現実的です。
  • 年間のパスワード忘れ率:30%/年
    • ボリューム感:対象人数 × 30% が、パスワード忘れ/ログイン不可などの問い合わせイベント数(例:1,000人なら300回、500人なら150回)
    • 根拠:SaaSが増えるほどID・パスワード管理が分散し、また一定の頻度でパスワード変更やロック解除が発生します。特にSSOで入口を統一する前は、問い合わせが“ゼロになりにくい領域”なので、概算の起点として置きやすい指標かと思います。

削減率

  • 削減率(自動化率):50%〜90%
    • Okta標準連携(OIN/SCIM等)による自動化を想定した「一般的に置かれがちなレンジ」です。
    • こちらは諸説あり、企業ごとに異なるとは思いますが、上記のイベントにおける削減率はかなりのものとなります。

まずは結論:Oktaの価値は3つに分けると見通しが良い

Okta導入の価値は、次の3つに分けると整理しやすくなります。

  1. 運用削減(定量化しやすい=ROIの“芯”になりやすい)
  2. 生産性向上(参考値として扱うのが安心)
  3. ガバナンス・リスク削減(定性でも意思決定に効く)

本記事ではまず、①運用削減を「割合」で語れる形に落とし込みます。

“率”で見る:1,000人/500人規模だと何が起きうる?

発生率を人数に掛けると、ざっくり「年間イベント数(期待値)」が見えてきます。

※あくまで期待値です。実データ(問い合わせ件数や人事イベント数)が取れる場合は、実データ優先で置き換えてください。

1,000人規模のイメージ

  • ID変動:1,000 × 15% = 150件/年
  • MFA紛失:1,000 × 20% = 200件/年
  • パスワード忘れ:1,000 × 30% = 300件/年

500人規模のイメージ

  • ID変動:500 × 15% = 75件/年
  • MFA紛失:500 × 20% = 100件/年
  • パスワード忘れ:500 × 30% = 150件/年

人数が変わると件数は増減しますが、考え方(発生率×削減率)は同じです。

削減率(50%〜90%)の“使い方”:断定せず、レンジで置く

削減率は便利な一方で、数字だけが独り歩きしがちです。ブログでは「前提つきのレンジ」で提示しておくと安心です。
Okta標準連携(OIN/SCIM等)やSSOによる効果を想定したレンジとなっており、領域(ID連携か、パスワード対応か)によって異なりますが、代表的な3領域でそれぞれ高い削減効果が期待できます。

  • 50%(保守的):標準連携できる範囲を中心に自動化できた
  • 75%(標準):主要SaaS連携がそろい、運用も整ってきた
  • 90%(上振れ):例外運用が少なく、運用が統一されている

運用削減を“割合”で語る:まずは3つの代表領域

ここからは、ROIの本体になりやすい領域を、発生率と削減率で整理します。

1) ID変動(15%/年):一番わかりやすい“定常イベント”

  • 毎年、全ユーザーの約15%で「作成・変更・削除」系の運用が必ず発生します。
  • 利用SaaSが30アプリあると、手作業運用は“横展開で増える”ため、影響が出やすい領域です。
  • Okta(UD/LCM+SCIM等)の設計がはまると、運用の自動化率 75%〜90%を置きやすい

2) MFA紛失(20%/年):ゼロにはならない前提で、じわっと効かせる

  • 全ユーザーの約20%は年内に、再登録・復旧イベントが起きうる
  • ただしゼロ化はしない前提で、削減率は 50%〜80% くらいのレンジで置くと自然
    • 方式の標準化、自己解決の導線、運用の一本化が効きます

3) パスワード忘れ(30%/年):入口の統一で効きやすい

  • 全ユーザーの約30%は年内にログイン系のトラブルが起きうる
  • SSOで入口を統一し、認証体験をそろえることで、削減率は 50%〜80% 程度のレンジで置きやすい

生産性向上は“参考値”として扱う

SSO等によるログイン短縮は魅力的ですが、短縮時間がすべて価値に転化されるとは限りません。

そのためブログでは、「参考値」として枠を分けて提示するのが安心です。

考え方(式)だけ置いておくと、自社に当てはめやすいと思います。

  • 年間短縮時間 = 対象人数 × 1日短縮時間 × 年間営業日数(240日)

※「1日短縮時間」は、「1回あたりのログインにかかる時間(数秒〜数十秒)× 1日のログイン回数」などから簡易的に算出できます。

プライスレスな統制効果:ガバナンス/リスク削減もROIの重要な一部

ここまで「発生率×削減率」で運用削減を整理してきましたが、ID基盤の刷新では、お金に換算しにくい“統制効果”が導入判断を後押しするケースも少なくありません。

代表的には次の3点です。

1) 退職者の即時遮断(消し忘れ・放置リスクの構造的な抑制)

  • 手動運用では、退職・契約終了に伴う「消し忘れ」「放置」が恒常リスクになりがちです。
  • Oktaで人事マスタ/ディレクトリと連動し、退職者のアクセスを即時・確実に遮断できる設計にすると、漏洩リスクを“構造的に”減らせます。

2) 権限の一元可視化(誰がいつ何にアクセスできるかを追える)

  • 利用SaaSが増えるほど、権限が各システムに散在し、実態把握が難しくなります。
  • Oktaをハブにすることで、アクセス権の所在を一元的に把握しやすくなり、監査・内部統制の説明責任を果たしやすくなります。

3) 認証強度の標準化(MFA全社強制など、最低限の防御線を作る)

  • システムごとに認証強度がバラバラだと、弱い箇所が攻撃の入口になります。
  • Oktaでポリシーを統一し、MFA全社強制などの最低限のガードレールを敷くことで、リスクを横断的に下げられます。

4) セキュリティ水準の底上げ(Oktaが得意とする“全社横断”の効き方)

資料にあるガバナンス要素に加えて、Oktaは一般的に「セキュリティの底上げ」という観点でも導入効果が語りやすい製品です。

  • 入口(認証)をOktaに集約することで、アプリごとの設定差・例外運用を減らしやすい
  • ポリシー(MFA、アクセス制御、条件付きアクセス等)を中央で一貫して適用しやすい
  • 認証の強化は、特定のアプリだけでなく“全社横断”で効くため、投資対効果を説明しやすい

これらは金額換算しなくても、「事故が起きたときに守れるか」「監査で説明できるか」という観点で、ROI(投資対効果)の重要な構成要素になります。

まとめ:まずは「発生率×削減率」から始めるのが近道

Okta導入のROIを考えるときは、まずはこの“率”を置けば十分スタートできます。

  • ID変動率:15%/年
  • MFA紛失率:20%/年
  • パスワード忘れ率:30%/年
  • 削減率:75%〜90%(標準連携前提のレンジ)

そして規模が1,000人でも500人でも、

  • 件数は人数に比例して変わる
  • ただし、議論の骨格(発生率×削減率)は変わらない
  • 規模に関わらず「属人化解消」「ガバナンス強化」とセットで語ると強い

という整理で、ブレない説明ができます。

おわりに:

いかがだったでしょうか。IDaaS導入に向けては必ず問われるROIについて具体的な例を用いて説明してみました。もちろん、各社ごとの事情やイベント、改善したい課題はあると思いますが、ROI算出の大枠やOktaにおける効果を測るはじめの一歩として活用いただければ幸いです。
※もちろんお話伺ったうえで、これまでの経験をもとにした弊社による詳細なROI算出も可能ですのでお気軽にお問い合わせください!