こんにちは、ネクストモード株式会社のゆきなわです。
業務効率化の切り札として、生成 AI の導入を検討する企業が急増しています。ChatGPT だけでなく、Gemini、Claude、Perplexity、GitHub Copilot など、現場からは多種多様なツールの利用要望が挙がっているのではないでしょうか。
一方で、こうしたツールを業務利用のレベルで展開しようとすると、一般的な SaaS と同様に、IT 管理者やセキュリティ担当者には次のような課題がのしかかります。
個々のサービス設定だけでこれらを統制するには限界があります。そこで本記事では、まず主要な生成 AI サービスが Okta の SSO / プロビジョニング(SCIM)にどこまで対応しているかを一覧で整理します。そのうえで、ID 管理基盤 (IDaaS) である Okta Workforce Identity を軸に、SWG/CASB や SIEM などのゼロトラストセキュリティプロダクトと連携しながら、これらのサービスをどのように安全かつ効率的に管理していくかを解説していきます。
生成 AI サービスを業務で安全に利用するうえで、Okta と連携するメリットは大きく次の2点に集約されます。これはセキュリティリスクの低減だけでなく、管理コストとライセンスコストの最適化にも直結します。
ID とパスワードだけでの管理は、使い回しや漏洩のリスクを常に伴います。Okta の SSO(シングルサインオン)を利用することで、次のようなメリットがあります。
強固な認証ポリシーの一括適用
生成 AI サービス側に多要素認証(MFA)やデバイス制限機能が不足していても、Okta 側で
MFA の必須化
会社支給 PC や社内ネットワークからのアクセスに限定
といった条件付きアクセスを一元的に強制できます。
認証の一元化による利便性と安全性の両立
ユーザーはサービスごとにパスワードを覚える必要がなくなり、ログイン体験が向上します。
同時に、パスワード漏洩リスクそのものを減らすことができます。
生成 AI の企業向けプランは、月額数千円〜と高額なケースが一般的です。Okta のプロビジョニング (SCIM) 機能を活用すると、入退社や異動に伴うアカウント管理を自動化できます。
入社時の即時発行
Okta で特定のグループにユーザーを追加するだけで、対象AIツールのアカウントが自動作成され、すぐに業務で利用可能になります。
退社時の確実な停止
人事システム連携などを通じて Okta アカウントを無効化・削除すれば、連携している AI ツール側のアカウントも即座に停止されます。
これにより、退職者による不正アクセスのリスクを排除できるだけでなく、利用していないライセンスを素早く回収してコストを最適化できる点が、経営的な観点からも大きなメリットとなります。
では、具体的にどのサービスが Okta での管理に対応しているのでしょうか。エンタープライズ用途で需要の高い主要な生成 AI サービスについて、SSO(SAML/OIDC など) および SCIM によるプロビジョニング への対応状況を整理しました。
※本記事の情報は2025年11月時点の公開情報に基づいています。各SaaSの仕様変更により、SSO/SCIM対応状況やライセンス要件が変わる可能性があります。最新情報は必ず各社の公式ドキュメントをご確認ください。
| サービス名 | SSO (SAML/OIDC) |
プロビジョニング (SCIM) |
備考・必須プラン等 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT (OpenAI) | ○ | ○ | Business で SSO、Enterprise で SSO/SCIM に対応。SCIM は Okta 等の IdP と連携してディレクトリ同期が可能 |
| Claude (Anthropic) | ○ | ○ | Enterprise で SCIM 対応(Team は SSO 中心)。グループ連携によりロール割当も可能 (support.claude.com) |
| Perplexity | ○ | ○ | Enterprise 以上で SSO/SCIM 対応。Okta・Entra ID など主要 IdP に対応 (perplexity.ai) |
| Gemini (Google) | ○※ | ○※ | Google Workspace 側と SSO/SCIM 連携(Okta→Google Workspace→Geminiの構成) |
| Microsoft Copilot | ○※ | ○※ | Microsoft 365 / Entra ID 側と SSO/SCIM 連携(Okta→Entra ID→Copilotの構成) |
※表中の「○※」は、親サービス(Entra ID 等)に依存する間接的・限定的な対応を指します。
一般的に、生成 AI サービスのエンタープライズ向けプランでは、SSO やプロビジョニングが標準的にサポートされており、Okta との連携が可能です。
Okta と ChatGPT Business の SSO 連携例については、以下の記事で詳しく紹介しています。
具体的なイメージをつかみたい方は、あわせてご覧ください。
| サービス名 | SSO (SAML/OIDC) |
プロビジョニング (SCIM) |
備考・必須プラン等 |
|---|---|---|---|
| GitHub Copilot | ○ | ○ | GitHub Enterprise Cloud として Okta と連携。SCIM は Enterprise Cloud/EMU 構成など Enterprise 前提 (okta.com) |
| Notion (Notion AI) | ○ | ○ | Okta 連携で SSO/SCIM サポート。通常は Enterprise プランでの利用を前提に設計されるケースが多い (notion.com) |
| Miro (Miro Assist) | ○ | ○ | Enterprise プランで SSO/SCIM 対応 |
| Canva (Magic Studio) | ○ | ○ | Canva for Teams / Enterprise での SSO/SCIM 対応。詳細は Canva 公式を要確認 |
| Slack (Slack AI) | ○ | ○ | Slack 本体が Business+ / Enterprise で SCIM 対応。Slack AI はその上で有効化 (slack.com) |
| Zoom (AI Companion) | ○ | ○ | Zoom の Okta 連携で SSO/SCIM 対応。一般に Business 以上での利用が多い (zoom.com) |
| Box (Box AI) | ○ | ○ | Box 本体が Enterprise プラン以上で SSO/SCIM 連携に対応 |
※上記以外にも、Okta Integration Network (OIN) には AI 関連 SaaS が登録されています。新興サービスの場合も、独自 SCIM エンドポイント+Okta の汎用 SCIM アプリで連携できるケースがあります。
生成 AI サービスの導入に先立ち、実運用において直面しやすい課題と、より高度なガバナンスを確立するための具体的な施策を共有します。
前述の通り、SSO/SCIM 機能は Enterprise プラン限定の機能として提供されているケースが大半です。Team プランや Pro プランなどで契約を進めてしまうと、後から SSO を導入する際に契約の巻き直しが発生する可能性があります。
ベンダーへの問い合わせ段階で、SSO(+可能であれば SCIM)利用を前提としていることを明確に伝えておきましょう。
SaaS によっては、サービス側のログイン画面から SSO を開始する方式(SP-Initiated)のみをサポートし、Okta ダッシュボードからのログイン (IdP-Initiated) に制約がある場合があります。
関連記事でも紹介していますが、ChatGPT などはこのケースになるため、Okta 側に Bookmark アプリ(ログイン URL へのリンク)を作成し、ユーザーを正しい導線へ誘導するといった運用設計が重要です。
SCIM によってユーザーアカウント自体は作成できても、有料ライセンスの割り当てまでは自動化できない SaaS も存在します。
「アカウントは作成されたが、有償機能が使えない」といった事態を防ぐために、
を事前検証しておくことが重要です。
Okta Identity Governance を併用すると、「誰に・いつまで・どの権限を与えるか」をより精緻にコントロールできます。
これにより、「付けっぱなしの権限・ライセンス」を減らしつつ、ガバナンスと説明責任のさらなる強化が可能です。
Okta が「誰がどのサービスを使えるか」を管理する一方で、Netskope などの SWG / CASB はネットワーク/クラウドのレイヤーから「実際にどの AI サービスへアクセスしているか」を制御できます。
このように、Okta(ID 統制)と Netskope(通信・クラウド統制)を組み合わせることで、「正式に許可した AI だけを、許可した人だけが使える」状態をより確実に実現できます。
Okta やクラウドプロキシ / CASB、各 AI サービスの監査ログを CrowdStrike などの SIEM に集約することで、運用・監査をさらに効率化できます。
といったメリットがあり、日々の運用から監査対応までを一つの基盤で回せるセキュリティ体制を構築できます。
Okta、SWG/CASB、SIEM 連携によるセキュリティ強化の全体像を下図にまとめました。
今回のブログシリーズでは、Okta だけでなく、Netskope や CrowdStrike を活用した具体的なセキュリティ対策の事例も紹介しています。本記事では触れていないエンドポイントセキュリティを含め、各セキュリティプロダクトをどのように組み合わせて活用できるかイメージしやすくなりますので、ぜひあわせてご覧ください。
生成 AI サービスは、セキュリティとガバナンスを担保するための適切なガイドラインを設けたうえで、企業の業務現場で積極的に活用できるフェーズに入っています。
本記事で整理したように、
といったレイヤーを組み合わせることで、誰が・どのAIを・どのように使っているのかをコントロールしつつ、現場の生産性向上も両立できます。
入口(認証)から、途中の権限・アクセス制御、出口の削除や監査、さらには横断的なログ分析までを包括的に設計することが、安全で持続可能な生成 AI 利用基盤を作るうえでの鍵になります。
自社のポリシーや既存システムとの整合を取りながら、どこから段階的に導入していくかを検討してみてください。
ネクストモードでは、Okta をはじめ、Netskope や CrowdStrike を活用した SaaS・生成 AI のゼロトラストセキュリティ対策をご支援しています 。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください!