ネクストモードブログ

ZOOXの乗り方:ラスベガスでの乗車体験

日本酒をこよなく愛する里見です。2025年12月2日、ラスベガスにて、アマゾン傘下のZOOXに乗車してきました。ZOOXは「人を運ぶためだけにデザインされた自動運転車」。ハンドルもアクセルもブレーキも、最初から存在しません。完全に「運転という概念」を持たない乗り物です。
前後対称でどちら向きにも走れる設計、360度を見渡すセンサー群、そして"移動をリビングに変える"ような内部空間──。わざわざ自動運転に乗ってなにが楽しいのかと思われるかもしれませんが、実際に体験すると、想像以上に未来で、心が躍ります。

乗車の注意点

ZOOXを利用するには、アメリカで作られたGoogleアカウントが必要でした。このハードルさえ越えれば、アプリのインストールから予約まではスムーズです。1回の予約で最大4人まで乗車可能ですが、今回は一人で利用しました。
乗車場所は複数選べます。今回はエクスカリバー・ホテル前を選びました。ZOOXの予約は乗車場所の近くまでいかないとできないようです。
ここで、いきなりトラブル発生。前の乗客が降りた後、ドアが開いたままになっていたので、そのまま乗り込みました。すると、車内のスピーカーから英語の女性の声が響きます。
「Can you hear me?」
異常があった場合には遠隔から監視をしているようで、「いったん降りて、アプリでドアを再度開けてください」と指示されました。どうやらZOOXのドアは、勝手に乗り込むと怒られる仕様のようです。

アメリカの携帯電話の番号で登録しました、。日本の携帯電話の番号でもSMSを受信できるようにしていれば、登録できるようです。

乗車場所は概ね決まっているようで、アプリのナビゲーションに従って場所まで移動します。

自分の前に乗っていた方に続けて乗車してしまったため、左下の画面が「See you nest time!」になっています。

車内は"無駄のない余白"がつくるくつろぎ空間

気を取り直して再乗車。向かった先は「エリア15」です。
ZOOXの車内は、窓だらけ。天窓からはホテルの高層階に設置された看板まで見えます。"視界の広さ=酔いにくさ"という方程式は、体験すると実感として納得できます。スマホを触っていても、まったく酔いません。
サンフランシスコでWaymoに乗ったときは、ハンドルが透明人間に取り憑かれたかのようにシャカシャカ動き、挙動も荒っぽくて少し酔いましたが、ZOOXは真逆でした。
4人乗りの座席はかなり広く、大柄なアメリカ人が座っても窮屈に感じないゆとりがあります。日本なら6人乗りにするくらいの空間設計です。背中を預けると自然と体の力が抜け、横揺れやコンクリートの振動は確かにあるものの、不思議と不快ではありません。手すりが一つもないのは、揺れの少なさに自信があるからでしょう。
室内には4つの小型モニター、4つのドリンクホルダー、そしてType-Cとワイヤレスの充電器。移動中にスマホが充電できるのはありがたい配慮です。天井に複数設置されたスピーカーは聴き疲れのしない音質で、晴れたラスベガスの午後を空中散歩しているような自由さを感じます。たとえていうなら、新幹線に乗っているような安心感があり、運転に身を委ねられる心地よさです。
最高速度は時速55kmほど。自動運転と聞くと慎重すぎて遅いイメージがありましたが、予想以上にキビキビと走ります。しかも障害物をスッと避ける動きは、間違いなく私より運転が上手い。

ワイヤレス充電器とドリンクホルダー。

音楽は複数のジャンルから選べます。音量はWaymoの方が大きかったですが、椅子がズンズンと振動する程度の臨場感がありました。

エリア15──SF映画のような不思議な空間

到着したエリア15は、謎めいた未来倉庫のような場所。どこまでが現実でどこからが演出なのか、曖昧な境界が楽しいエリアです。思った以上に楽しめました。
ZOOXで運ばれてきたこともあって、「街から未来へ移動した」感がとても強い。その感覚が、体験全体を特別なものにしていました。

人間が車に酔う、不思議な現象について

車に酔いやすい私はYOWANを活用してますが、今回は酔い止め対策は不要でした。車酔いは、一般的に脳の勘違いが原因だと言われていて、運転手よりも同乗者が酔いやすいと言われています。そのため、自動運転になると、車酔いがひどくなると言われてきました。
目は「景色はあまり動いていない」と言うのに、三半規管(耳の奥にあるバランスセンサー)は「いや、今めちゃくちゃ動いてる!」と抗議してくる。この"情報の不一致"を脳が毒物の摂取と誤認し、「大丈夫か? 吐いたほうがよくないか?」と警告する。これが酔いの正体らしいです。
ZOOXは窓が広く、視界が抜けているので、"脳が受け取る情報の不一致"が減ります。だからスマホを触りながらでも酔わないわけです。Waymoのように揺れが大きかったり、視界が狭いと酔いやすくなるのは、このためです。
広い天窓が、乗り物酔いから解放してくれる。それだけで、移動体験の質は劇的に変わります。

広い天窓が乗り物酔いから解放してくれます

移動空間が「仕事場にも寝室にも」なる未来へ

今回、ZOOXに乗ってみて思ったのは、「移動の価値が劇的に変わる」ということでした。
運転が必要なくて、酔わなくて、広くて静かで、充電もできて、しかも安全。そうなると、その時間でできることが一気に増えます。
・お酒を飲みながら移動する未来。
・オンライン会議をしながら移動する未来。
・昼寝しながら目的地に運ばれていく未来。
遠いようで、もう手の届くところまで来ています。
ラスベガスの午後の光の中を、遊園地のアトラクションのような乗り物に揺られながら、「人生って意外とスムーズに変わっていくものだな」と、不思議な満足感を感じました。