Asana開発責任者 Arnab Bose インタビュー ~AI時代、仕事はどう変わるのか~

日本酒をこよなく愛する里見です。サンフランシスコのAsana本社で、Asanaの開発責任者であるアーナム・ボース(Arnab Bose)氏にインタビューをしてきました。

アーナム氏は、現在Asanaにおいてプロダクト領域を統括し、AI戦略と次世代ワークマネジメントの設計をリードするエグゼクティブです。生成AIを単なる機能追加としてではなく、「人間とAIの協働モデル」として再設計する立場にあります。
Asana参画以前、アーナム氏はOktaでプロダクト開発を担当。ID管理およびアクセス管理領域において、エンタープライズ向けプロダクトの設計・開発を牽引してきました。
ID×セキュリティという「信頼のインフラ」を設計してきた経験が、現在のAsanaにおける「AI×ワークマネジメント」という文脈に接続されています。
「仕事をどう管理するか」ではなく、「人間とAIがどのレイヤーで意思決定し、どこで責任を持つのか」。
その構造を設計する立場にある人物に、AIに関する考えを中心に質問をしました。

なお、アーナム氏のインタビューの続きは、ネクストモードの公式YouTubeに公開していますので、こちらもご覧ください。

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アーナム・ボース(Arnab Bose)氏

自己紹介


里見:最初に簡単に自己紹介をお願いします。そしてサンフランシスコでいちばん好きな食べ物を教えてください。

アーナム:Asanaでプロダクトを担当しています。特にAI機能の戦略と開発をリードしています。サンフランシスコで一番好きな食べ物は、A5神戸ビーフのブッチャーバーガーですね。

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AIについて


里見:3年後の「当たり前」を1つだけ断言するとしたら何ですか?

アーナム:ナレッジワーカーの仕事の最初の80〜90%はAIが完了させる、これが当たり前になると思います。PRD(要件定義)のドラフト作成、デザインプロトタイプの初期案、SOW(作業範囲規定書)のたたき台などは、まずAIが作る。人間はその後、レビューし、意思決定し、他者とアラインメントを取る役割になります。仕事は「ゼロから作る」ものではなく、「AIが作ったものを意思で整える」ものへ変わるでしょう。

里見:AIは「検索」→「生成」→「エージェント」と進化しています。3年後はその次、何フェーズだと思いますか?(命名もお願いします)

アーナム:検索 → 生成 → エージェント
その次は「マルチエージェント協調フェーズ」です。複数のAIエージェントが、プロジェクトやタスク単位で役割分担しながら連携し、文脈(コンテキスト)の階段を上っていく。単一エージェントではなく、AIチームが存在する世界です。

里見:3年後、人間のスキルで一番価値が上がるのはどれですか?

アーナム:好奇心です。
もし仕事の実行能力がAIによってほぼ無限に拡張されるなら、制約は「キャパシティ」ではなく「想像力」になります。何を問い、何を試し、何を組み合わせるか。境界はスキルではなく、好奇心で決まる時代になります。

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Asanaのミッション:世界中のチームが容易に協力しあえるようにし、人々の豊かな未来に貢献すること

アメリカでオススメのAI関連サービス


里見:アメリカで「これは日本の皆さんに紹介したい」と思うAI関連サービスは?

アーナム:Granolaです。会議の議事録とアクションアイテムを自動で整理してくれるツール。
一言で言えば「完全かつ永続的な記憶」。必要な瞬間に、即座に呼び出せる拡張脳のような存在です。

里見:今後、どんなAI関連のサービスが出てくると思いますか?

アーナム:フィジカルAI。例えば、Tesla Optimusのようなロボティクス領域です。ソフトウェアAIが知的労働を変えたように、物理空間で働くAIが産業構造を変えるでしょう。

里見:AI未来を考える上で、「これだけは読め」を教えてください。

アーナム:正直に言えば、今は本よりも「触ること」です。ツールやプロダクトの進化があまりにも速い。理論より実践の方が学習効率が高い。その上で、最近の出版物で参考になるのは
Claude Code関連の実践的な書籍です。理論より手を動かす。これが今の最適戦略です。

里見:3年後の人類に一言メッセージを贈るなら?

アーナム:未来は、起こるものではない。静かで繰り返される選択の積み重ねによって、創られるものです。この3年間、私たちが良い選択をしていることを願っています。

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インタビューを終えて


今回のインタビューで印象的だったのは、「AIは代替ではなく、前工程の自動化である」という整理です。これはバリューチェーンの再設計に近い発想です。AIは付加価値の源泉を「実行」から「意思決定・創造」へとシフトさせる。つまり競争優位は、オペレーション効率ではなく、問いの質に移るということだと思います。
問いの質が問われる時代においては、好奇心を持って働くことがますます重要になってくるのでしょう。
AIが80%を担う世界で、残りの20%に何を込めるのか。そこに企業のアートが宿るのだと思いました。

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