はじめに
こんにちは、ネクストモード株式会社のiwaです。 2026年8月にネクストモードに入社し、Netskopeを含め、ゼロトラストに関するSaaS製品をメインで触っています。
Netskope Clientを配って運用が始まると、次に「この機器にはClientが入らない」という話が出てきます。
Clientを入れられないけど、 通信を可視化して制御したい機器はどうすればいいのか。
そこが自分の疑問でした。 今回は、そうした機器のインターネットへ出ていく通信を、Netskopeで管理する方法を整理します。ライセンスと帯域は第2回、AWSでの構成と構築は第3回・第4回で扱います。
結論
この記事の結論
端末を管理する基本は、Netskope Clientです。 証明書の配布や社外での利用まで守れるので、公式も導入を勧めています。[4] 一方、Clientを入れられない機器も、外向きの通信は拠点の出口からIPSec でまとめて送れば、Netskopeで管理できます。[1]
IPSecで届いた通信は、WebならURLやカテゴリ、Web以外なら宛先IPやポートで制御できます。 誰の通信かを見分けるには、ClientかSAML認証が別に要ります。
自社で使えるかは、どの機器が、どこへ、どの出口を通って通信するかの3点で判断できます。
Netskope Client、Explicit Proxy、IPSec、GRE、Proxy Chaining、Borderless SD-WAN、NewEdge Express ConnectからNetskope Cloudへ通信を送る経路と、Secure Web GatewayおよびCloud Firewallによる制御を示した図です。 Netskope Cloudへ通信を送る主な経路(本記事で7つに整理) 下の矢印が「通信を届ける方法」、雲の中が「届いたあとの制御」です。本記事で扱うのは、拠点のルーター/ファイアウォールから送る ③ IPSec です。 Netskope Cloud 届いたあとの制御は、サービス側の機能 Secure Web Gateway … Webアクセスを分類して制御 / Cloud Firewall … 非HTTP(S)通信を宛先IP・ポートなどで制御 1 Netskope Client 2 Explicit Proxy 3 IPSec 本記事で扱うのはここ 4 GRE 5 Proxy Chaining 6 Borderless SD-WAN 7 NewEdge Express Connect 送信元 届ける 管理端末・ブラウザー 端末側に設定を入れて送る 拠点のルーター/ファイアウォール ネットワークの出口からまとめて送る 社内の既存プロキシ いまの経路から転送する SD-WAN機器 SD-WAN側でまとめる 自社ネットワーク 専用のイーサネット接続 公式ドキュメントのTraffic Steeringの節には14本のページが並びます。上の7つは、そのうち通信を送る経路そのものを説明しているページです。 数えなかった7本:App Definitions/Steering Configuration/IPv6 Traffic Steering/Locating Your Netskope NewEdge Data Center/NewEdge IP Ranges for Allowlisting/Enterprise Browser/Explicit Proxy over IPSec and GRE Tunnels(経路の組み合わせ)。公式が「経路は7つ」と書いているわけではありません。 出典:Netskope公式ドキュメント「Traffic Steering」「Explicit Proxy」「Proxy Chaining」「Borderless SD-WAN」「NewEdge Express Connect」(2026年9月24日確認)をもとに作成
図1 通信をNetskopeへ送る主な経路(下=届ける方法/上=届いたあとの制御)
Netskopeへ通信を届ける方法はいくつかあり、そのうち拠点のネットワーク機器からまとめて送るのがIPSecです。
Clientを入れられない機器は、拠点の出口からまとめて送る
IPSecは、機器ごとではなく、拠点の出口ごとに通信をNetskopeへ送る方法です。[1] 出口は、対象の通信が拠点からインターネットへ出るときに通るルーターやファイアウォールで、そこからNetskopeの接続拠点であるPoPへトンネルを張ります。管理画面では、この接続設定を IPSec Site と呼びます。[5]
拠点のルーターまたはファイアウォールからNetskope PoPへ通信を送る経路と、IPSecによる暗号化区間を示した図です。IPSecの暗号化とHTTPSのTLS復号は別の処理です。 1本を抜き出した模式図です。実際は異なる2つ以上のPoPへ構成します。 拠点 Clientを入れられない機器 サーバー / IoT機器 / 複合機 社内LAN このIPSec 暗号化区間の外 ルーター/ ファイアウォール 1 2 接続相手を認証し、鍵を交換 通信を暗号化して送る 元のIPパケットごと包んで送る Netskope PoP IPSecトンネルを終端 ポリシーを適用 インターネット SaaS・外部サービス IPSecで通信を暗号化する区間 この区間の暗号化と、HTTPSの内容を見るTLS復号は別です。 Netskope側にIPSec Siteを作り、拠点側にトンネルと、対象通信を送る経路を設定します。 出典:Netskope公式「IPSec」「Creating an IPSec Site」をもとに整理(2026年9月25日確認)
図2 IPSecの通信経路と暗号化区間
出口の機器には、次の条件があります。[1]
IKEv2に対応していること(NetskopeがサポートするのはIKEv2だけ)
NAT-Tに対応していること
事前共有鍵(PSK)で認証できること
公式の対応表にある暗号方式・DHグループを使えること
相手の死活を確かめるDPDとキープアライブの有効化も、公式が推奨しています。[1] トンネルは、異なる2つ以上のPoPへ張ることが必須 です。予備のトンネルへ切り替わるフェイルオーバーを設定し、その切り替えを定期的に試験することも求められています。切り替えは出口の機器の側で起き、Netskopeからは見えないためです。[1]
拠点のすべての通信をトンネルへ流す必要はありません。公式には、ポリシーベースルーティング(PBR)でHTTP/HTTPS(80番・443番)の通信だけをトンネルへ向ける例があります。[1] どこまで選り分けられるかは、出口の機器の経路制御の機能(PBRなど)で決まります。
ここで、通信を「どこへ送るか」と、Netskopeへ到達した後に「どう処理するか」は分けて考えます。IPSec配下では、拠点側のルーティングが通信をトンネルへ送るかを決めます。Netskope Cloudへ到達した後は、例外設定やポリシーに従って処理されます。具体的な挙動は第4回で確認します。
IPSecで届いた通信で、何が見えるのか
見える範囲は、Webの通信かそれ以外か、そしてユーザーを識別するかどうかで変わります。 IPSecは、通信を届けるだけです。届いた通信を管理するのは、Secure Web GatewayやCloud Firewallの機能で、IPSecを使うにもどちらかのライセンスが必要です。[1]
見たいもの
IPSecで届いた通信での扱い
使う機能・条件
Webアクセスの宛先・カテゴリ
把握・制御できる
Secure Web Gateway[2]
Web以外(TCP / UDP / ICMP)の宛先・ポート
送信元・宛先IPやポートで制御できる
Cloud Firewall[3]
ユーザー名
通信を送るだけでは分からない
ClientかSAML認証[4]
HTTPSの中身
復号できれば検査できる
機器がNetskopeのCA証明書を信頼していること[1]
機器の中で終わる操作(コピー、USB保存など)
ネットワークに出ないので届かない
—
Clientなしで、誰の通信かを見分けるには
IPSec/GRE経由の通信をユーザー単位で識別するには、Netskope Clientによる識別かSAML認証を組み合わせます。
Clientを導入していなくても、ブラウザでIdPのログイン画面を操作できる端末なら、IPSec/GRE経由のSAML認証で利用者を識別できます。[4] 利用者がブラウザで外部のWebサイトを開くと、Netskopeの認証プロキシを経てIdPのログイン画面に移り、ログインすると目的のサイトが表示されます。[12] 既定では、認証した利用者と端末のIPアドレスを対応付けます。[13]
一方、サーバーやCLIのみの機器など、人がブラウザでログインしない通信はSAML認証を完了できません。そのような通信には、送信元IPを指定して認証対象から外す設定があります。公式は、ゲスト用Wi-Fiやサーバーのサブネットを例に挙げています。[14] 対象から外した通信は利用者を特定できませんが、Webの通信には「Unknown」を対象にしたカテゴリのポリシーを設定できます。[2]
HTTPSの中身を見るには、証明書の信頼が要る
HTTPSの中身を検査するには、機器やアプリがNetskopeのCA証明書を信頼している必要があります。 図2のとおり、IPSecが暗号化するのは出口とPoPの間で、HTTPSの中身を見るTLS復号とは別の仕組みです。Clientのない機器へルートCA証明書を配布する手順は、公式に用意されています。[4]
証明書ピンニングを使うアプリの中には、CA証明書を配っても復号できないものがあります。[6] Clientでは、こうしたアプリを復号せずに通すよう、ステアリングの設定で指定できます。IPSec/GREでは、通信がブラウザからかアプリからかを見分けられないため、この指定は使えません。[10] 代わりに、SSL復号をしないポリシーで、対象のドメインやカテゴリを指定します。[10] 第4回では、AWS検証環境で確認した通信経路とイベントを紹介します。
自社の候補は、機器・通信先・出口の3点で見つける
機器・通信先・出口の3点が分かれば、その機器をIPSecの検討対象にできるかを判断できます。
見るところ
確認すること
どこを見るか
機器
Clientを入れられるか。入れないなら、その理由は何か
機器の仕様書、Netskope Clientの対応OS・プラットフォーム表 [8]
通信先
どの機能が、インターネット上のどのサービスと通信するか
機器のマニュアル、ファイアウォールの通信ログ
出口
その通信はどの機器を通って出るか。その機器がIKEv2・NAT-Tに対応しているか
ネットワーク構成図、機器のネットワーク設定
複合機で考えると、クラウドへのスキャン送信やファームウェアの取得は、出口を通るインターネット向けの通信なので検討対象になります。機器内で完結するコピーは対象外です。社内ファイルサーバーへの保存も、通信が拠点内で完結し、IPSecトンネルへ送られない構成なら対象外です。
判断の分かれ目は、機器名ではなく、その機器のどの操作が、どこへ通信するかです。
おわりに
今回整理して分かったのは、IPSecはNetskope Clientの完全な代わりではなく、拠点の通信をNetskopeへ届ける方法だということです。トンネルを張るだけでは、利用者の識別やHTTPSの復号まで完了しません。経路、識別、復号を分けて考えることが、Clientを入れられない機器を管理するポイントです。
自社で検討するなら、まず機器を1つ選び、機器名/通信先/プロトコル・ポート/通る出口/管理したいことをメモしてみてください。分からない項目は空欄のまま、ネットワーク担当者と確認を進めます。
次回
第2回では、IPSecを利用するために必要なライセンス、帯域、容量評価を整理します。
自社の構成で判断がつかない場合は、弊社でもNetskopeの導入支援を行っていますので、お問い合わせください。